下田市のまちなか、旧下田町の街路のほとんどは、江戸時代前期の町割りによって形作られたものです。東西南北に交差する街路で区画された町並みには、下田町の歴史が刻まれていると言えます。(「下田市下田町伝統的建造物群保存対策調査報告書」より)この町並みを十字に分断するように、現在道路拡幅が計画されています。

 道路は災害時の地域消火や住民の初期避難、緊急車の通行など、防災上重要な役割を果たします。
 特に津波による避難において、多くの人が道路にあふれ出るなかで、いかに安全かつ早急に高台まで避難できるかが重要となります。
 
 そこで、現在計画されている道路を拡幅した場合と拡幅しない場合で避難にどのような影響が及ぶのかシミュレーションを行うことにより調査しています。

まちなかには8mと12mに拡幅する道路計画があります。   寛文、延宝年間「豆州下田港之図」に表されるまちの形と現在の形は同じです。
          図 現在の地図と拡幅計画がある道路                図 江戸時代(寛文・延宝)の絵図(「豆州下田港之図」)

 調査の流れ

第1段階現状の道路と道路拡幅後の避難シミュレーションの比較
第2段階地震による建物倒壊で道路が塞がる確率の調査
第3段階第2段階の調査を踏まえ、通れない道路がある場合における、現状の道路と道路拡幅後の避難シミュレーションの比較

 調査については、国土交通省 国土技術政策総合研究所 沿岸海洋・防災研究部 主任研究官 熊谷 健太郎氏のご協力のもと行っています。途中経過を一部報告いたします。

 

 第1段階

 (現在、条件を変更したシミュレーションを作成しています。内容は今後変更される可能性があります。シミュレーションは様々な条件のもと成り立っています。ひとつの条件を変更するだけでシミュレーション結果は大きく変わります。避難パターンのひとつのケースとして参考としてご覧下さい。)
 シミュレーション条件
1徒歩による避難が原則(車による避難は考慮せず)
2避難者は、最寄りの避難場所まで最短経路を避難(収容人数の制限あり)
3避難者の属性(年齢、グループ行動比率など)を考慮し個人単位で歩行速度を設定(最も多い設定はグループ歩行者(構成比率60%)で1.13m/s)
4群集としての相互作用(混雑など)を考慮
5一つの建物に2名いる設定
 シミュレーションの見方(混雑の発生状況の目安)
緑色通常の歩行速度
黄緑色通常の約90%程度の速度
黄色通常の約75%程度の速度
橙色通常の約50%程度の速度
赤色通常の約25%程度の速度

      避難シミュレーション(拡幅なし・避難場所6箇所)                  避難シミュレーション(拡幅あり・避難場所6箇所) 
     
         (ダブルクリックで全画面表示になります)                          (ダブルクリックで全画面表示になります)


 グラフ 「拡幅なし」と「拡幅あり」ケースにおける避難時間の比較 (避難場所6箇所の場合)
     
  「拡幅なし」の場合の避難開始から避難完了までの時間の平均値・・・517.3秒
  「拡幅あり」の場合の避難開始から避難完了までの時間の平均値・・・517.1秒
  ⇒拡幅により平均値が0.2秒短縮

 避難シミュレーション結果から、道路拡幅による避難時間の減少は大きく見られませんでした。反対に避難時間が長くなった人の傾向は、広い道路をスムーズに進んだあと狭い道で渋滞にはまり、時間がかかったものです。